JUONのあの人: 第2回 木村高江さん

第2回 JUONのあの人
木村高江さん

たかねぇは1971年生まれ。生まれは山形だが、父親が転勤族で学校はずっと大阪だった。本人曰く「引越しが多く、小中高の寮生活でもまれて育ったせいか、新しい場に移る、入ることに抵抗がなく、これだ!と思ったら、動いてしまうところがある。まだまだ動く?かも。」
 


「森林ボランティア青年リーダー養成講座in東京」を02年に受け、今は群馬県の森林組合で働いている、「たかねぇ」こと木村高江さん。林野庁の「緑の雇用プロジェクト」によりIターンをして丸一年。JUONでの経験の影響は?仕事として森林に関わっての実感は?久しぶりに再会した「神の泉 森林の楽校」で、インタビューしてきました。
 
 

Iターンや森林ボランティアと昔から山を生業としてきた人達の感覚を上手く融合できたら…


「学生の時から、会社に入るって気がさらさらなかった。契約でちょうどいい。期限が来て、心置きなく次のことを考えられる。私はそういう感じなんですよ。不安がない。」

多くの人が自分の気持ちを無視して、将来への不安から安定した会社を求める時代、たかねぇはそんな言葉をさらっと口にする。

大学を卒業して3年間、母校(全寮制)の寮の職員として250人の女子高生と寝食を共にした。青少年に関わる仕事の面白さを感じたという。青年海外協力隊としてアフリカのニジェールに行き、その後も日本で契約職員として働いてはニジェールに戻る生活が続く。ニジェールでの勤務は計3回、4年半になった。

2度目のニジェールから帰国した時、新聞で「森林ボランティア青年リーダー養成講座in東京」を知り、参加を決めた。

「ニジェールの自然の中で暮らして、自然の影響をどっぷり受ける生活がどういうことか体感した。日本に帰ってからもどこかで自然に関わりたいなって思ったの。山に行って面白いのは、山仕事をしてきた人達の所作や、里山に住む人達の生活がすごく理にかなって無駄がないこと。家から鳩ノ巣まで結構遠いけど、早起きするのは苦にならないし、次の日仕事に行っても元気。私にとってはそれだけ楽しくて心地よかったんだろうな。」

3度目のニジェール行きを決めた時、森林ボランティアの活動ができなくなることが本当に心残りだったそうだ。せっかく買った鉈や鋸も使わないまま旅立った。「隊員のプロフィールに『日本に置いて来たもの』って欄があって、『マイ鉈・マイ鋸』って書いたよ。それぐらい、私の中で木に関わる活動をしたことは大きかった。」

帰国後、青少年のボランティアを推進する団体で契約職員として一年ほど働きながら、林業への転職を本気で考えるようになった。08年4月に群馬県の林業就職支援講習を受け、6月から林野庁の「緑の雇用」制度で研修生として紹介された群馬の神流川(かんながわ)森林組合に就職する。「森林の楽校」でゆかりのあった神泉村のすぐ隣だったことやIターン、女性を積極的に受け入れていたことなどが決め手となったそうだ。

一年間実際に森林組合で働いてどのようなことを感じたのだろうか?

「山で働いている人達、特に昔からのベテランの人達は、必ずしも山が好きで仕事をしている人ばかりじゃないの。代々山を持っていたとか、好むと好まざるとに関わらず選択肢がなかったという人が多い。好んで来た私達Iターンの若者といろいろと感覚が違う。受け入れがたいものがお互いあったりもするんですよ。例えば、山で作業中のポイ捨てとか。山のことをよく知っていて色んなことを教わるし、私達が緑が空気がどうのって言っても、山で育ってそれが普通の人には響かないのもわかるんだけど。」

時間はかかるかもしれないが、Iターンや森林ボランティアと昔から山を生業としてきた人達の感覚を上手く融合できたら…と、たかねぇは今後の展望を語る。

「神流町の小学生の職場体験を森林組合で受け入れたんだけど、山に囲まれて育った子ども達でも山の降り方がわからないのね。近くに森林があっても行ったことがない、関わってない。子どもが森林の体験をできる機会をつくることは大切だと思う。体験しなければ好きか嫌いかわからない。」

小学校の生徒は全校でも約40人、町内放送ではほぼ毎日のようにお悔やみが流れる。たかねぇの話からは、「過疎」ということがリアルに伝わってくる。

「地域に子どもが少ないとこんなに寂しい気持ちになるもんだって、すごく感じているんですよ。でも、今の給料で結婚して家族を養えるかっていったら自信はないです。Iターンで来た人は、ほとんどが独身のまま。近所のおばあちゃんが畑でとれた野菜をドサッと玄関に置いていってくれたり、朝早く起きて早く寝てお金を使う機会もあまりなかったり、ということがあって1人だったらなんとかやっていける。それくらいの経済状態。3、4年でもっといい待遇のところを探して他の地域に移ってしまう人も多い。『森林の楽校』がこの地域にもあって、参加した人がプライベートで何度も来てくれるようになったら、まちおこしになるし、移り住むきっかけにもなるかもしれない。土日があれば、友達や子どもを連れて森林に行ける。そういう参加しやすいプログラムが、場所も回数も、もっと増えてくといいな。」

 

  • 2009年7月4日(土)に行われた「神の泉 森林の楽校」に、参加をしてくれました。

  • 第4期森林ボランティア青年リーダー養成講座の第1回、初めてJUONの活動に参加したたかねぇ(2002年)。
 
須田 直菜・田中 みと
JUON NETWORK 2009年 第71号