第22回 JUONのあの人
鳥居由佳さん
鳥居さんは1982年、大阪府東大阪市で生まれた。母校の大学で事務職員をしながら、第5期「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」を受講。2013年より、川上村に移住し、地域おこし協力隊「かわかもん」として活躍中。「私も本気でやるから、村長も本気で林業考えてよって言ったんですよ(笑)。」
鳥居由佳さん
鳥居さんは1982年、大阪府東大阪市で生まれた。母校の大学で事務職員をしながら、第5期「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」を受講。2013年より、川上村に移住し、地域おこし協力隊「かわかもん」として活躍中。「私も本気でやるから、村長も本気で林業考えてよって言ったんですよ(笑)。」
第5期「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」修了生の鳥居由佳さんは、昨年、地域おこし協力隊として奈良県川上村に移住しました。都市から農山村へ移り住んで感じたことや、協力隊としての取り組み、林業への思いを話してもらいました。
数を増やすより、根気よく通ってあげてほしい。地元の人は待ってますよ
「私が川上村に辿りついたのは、JUON NETWORKに出会ったからというのが、かなり大きいので。」
林業に関心を持ち、インターネットで見つけた「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西(以下、リーダー講座)」に第5期生として参加した。当時は、「仕事辞めてまで林業することになるとは思っていなかった」ので、週末に趣味程度で山に入れたらいいなという軽い気持ちだった。もともとは、休みのたびに沖縄に通うほど大の海好き。それがなぜ、林業の世界に飛び込むことになったのか・・・。
鳥居さんの出身は、奈良県との県境に位置する東大阪市の山のふもと。お祭りになると、平日でも休みを取ったり帰省したりする程、地域のつながりが強い場所で、山に詳しい人が身近にいる環境だった。たけのこ掘りに行った山で地元のおっちゃんがつぶやいた、「あそこの山は人が入らなくなって死んだな」という言葉。木が生えていれば「良い山」という認識だったので、どういうことだろうと疑問に思った。
リーダー講座では、森づくりの基礎を学べたことがよかったと、改めて感じている。林業の現場では「そこまでやらない」ような、森林ボランティアならではの安全管理も貴重な経験になった。講座修了後、より深く林業を知りたくなり、さまざまな林業関係のガイダンスやイベントに出向くようになった。そこで出会った人から、林業女子会や若手林業ビジネスサミットのことを聞き、サミットに参加。絶対林業をやると決めたのは、その時だった。
「何とかしたいと熱くなって、全国的に手を組もうとする姿に、未来めっちゃあるやんって思ったんですよ。そこから、仕事にしてもいいかもって思って。」
その後、奈良県の南部農林事務所の職員に誘われ川上村へ。ぜひ会わせたいと紹介されたのが、村の林業を長年支えてきた辻谷達雄さんだった。愛称「たっちゃん」を塾長に、仲間と「源流塾」を立ち上げ、山の知恵や自然について学んでいった。その頃、川上村で地域おこし協力隊を募集し始めたと知って応募。通うより住んだ方が、早く山のことを知れると思った。
協力隊として1年半、ちょうど折り返し地点にいる。これまで、「吉野の森 満腹ツアー」を企画して都市部の人を村に呼んだり、村内のイベントに林業バーを出店したりと、内外に川上村の山をPRしてきた。とにかく、衰退していく村の林業に、なんとか突破口を見つけたいと奮闘中だ。樹齢300●年を超す大木が林立する吉野杉のイメージが、かえってあだになっているのでは?と鳥居さんは考える。それでは一般の人には手が出せない。誰でも手に取れる、身近な生活で使われるものにしたい。その思いで最近製品化したのが、ポータブル屋台「ナガスギ」。
「製品開発って難しいですね。林業界自体が自分にとってはゼロからのスタートすぎて、活かせることほんまにあるんかなって思いましたよ、最初は。作業もそうだし、何か作れるわけでも、何かに長けてるわけでもないから、ただ思いだけで、走ってきているので。」
逆に何も知らないからこそ、一般の人の視点で吉野杉の活かし方を考えられる。「木を使おう」と言っても、丸太のどの部分はどんな風に使えるか?加工の手間やコストはどれ位なのか?それが判らないから使い方のイメージが広がらない。歴史的には灘の酒樽に特化していた使用先から広げるために、まずは1本の丸太の全ての部分を自分で使い尽くし、それをレシピ化するプロジェクトも始めた。
村との関わりを、協力隊の任期である3年で終わらせる気はないが、住み続けるとも決めていない。今もJUONの「熊野の棚田 田畑の楽校」に参加し、色川を訪れる。そこでIターンで村に入った人からアドバイスをもらうと、早く態度を決めないとと思う。でも、まちに出てPRイベントなどをする度に「川上村という看板を背負っている」という思いは強くなる。
農山村でのイベントに外から参加する側から、山で待つ側の人間に変わったという鳥居さん。両方の思いを知った今、これからのJUONについて思うことを聞いた。
「つながりのあるフィールドを大切にして、数を増やすというより、通ってあげてほしいなと思います。地元の人は待ってますよ、意外に。期待してない割に期待してるんですよね。」
「熊野の棚田 田畑の楽校」でのゆかちん。「むらからの手紙」連載中のもーりー(右)とは、関西ヤングジュオンの仲間だ。
仲間と立ち上げた「源流塾」にて、間伐後の皮むき中。
岩下 広和・高木 健郎・徳田 一絵
JUON NETWORK 2014年 第92号
JUON NETWORK 2014年 第92号
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