JUONのあの人: 第16回 星真由美さん

第16回 JUONのあの人
星真由美さん

星さんは1960年、宮城県矢本町(現・東松島市)に生まれた。結婚後、多賀城市に住んでいたが、2000年に七ヶ浜町へ。水泳の指導員を続けながら自分らしく働ける仕事をと、02年より七ヶ浜社協の非常勤職員になる。「最近はボラセンが忙しくて、水泳指導員できないけどね。」
 


東日本大震災の直後から、大学生協ボランティアセンターと共にJUONが復興支援活動を行ってきた宮城県七ヶ浜町。現地のボランティアセンターとして活動の受け入れをしていただいている七ヶ浜町社会区福祉協議会の星真由美さんに、震災前後と今、そして、これからについて伺いました。
 
 

大変な思いしながら、前に進もうって元気が出るのが復興だよね。


「準備をして来たものの、心のどこかで『絶対くるわけないよな』って考えていましたし、津波が来たとしても床下浸水とか、床上浸水くらいかなと思ってました。まさかこんなに家が流されるとは。」

東日本大震災からの2年を振り返り、そう話す星さん。

震災以前から、七ヶ浜の社会福祉協議会(以下、社協)でボランティアコーディネーターとして勤務していた。ボランティアをしたい人と受け入れ先を調整したり、ボランティア養成のための研修会などを開催したりするのが主な仕事である。そんななか、2003年に発生した宮城県北部連続地震。星さんも、被害の大きかった地域に職員として派遣された。当時は、災害ボランティアセンターを立ち上げてもノウハウがなく、支援に訪れた団体に仕切ってもらう状態だったという。それを機に、宮城県社協は平常時の活動として災害対策に力を入れるようになり、なかでも七ヶ浜社協は先駆的に取り組んで来た。災害ボランティアセンターの立ち上げやマンパワーの育成など、日頃から準備して来た経験が、今回の震災で大いに発揮されることとなった。

ボランティアセンター立ち上げの後、最初のボランティア団体として受け入れていただいたのが大学生協だった。初期の頃の外作業に始まり、ニーズ調査、学習支援や集会所訪問など、震災直後の4月から、この3月まで、1000人近くの学生が参加している。

「全国から何百人という学生が来てくれたことに関しては、本当に感謝しきれないし、今でも運営してくれるみんながいるってことが、すごい力強いっていうかね…力になっていますね。」

震災から丸2年の節目として、「『絆』メモリアルイベント」が3月16日に開催され、大学生協もスタッフとして手伝わせていただいた。これまで七ヶ浜を訪れた6万人以上のボランティアへ感謝を伝えたい、との催しに、会場は、地元住民の方やボランティアでいっぱいになった。

震災後一年半は、全国から駆けつけるボランティアの受け入れに、とにかく無我夢中で、亡くなった知人をゆっくり思う間もなかったと語る星さん。また、それほどたくさんのボランティアが来てくれ、元気をもらっていた。ここ半年くらいで、しみじみと亡くなった人を思い、平日などボランティアの来ない日があると寂しさを感じるようになったそう。

しかし、「ボランティアが減った」とは感じないという。これまでの7万人はつながっている。何かあれば来てくれる、来たいと思ってくれる人がいる。例え来られなくても、七ヶ浜を縁に、様々なところでつながってくれていることが嬉しい、と。

メモリアルイベントを終えた星さんに、七ヶ浜の復興のこれからについて尋ねてみた。

「形はもう元には戻れないんだよね、いくら頑張ってもね。でも、みんなが大変な思いしながら、前に進もうって元気が出るのが復興だよね。」

例えば、新たに取り組み始めた「パソコン教室」は好評で、また来月もやりたいと声が上がっていること。また、仮設住宅から公営住宅への意見交換の場では、「みんなで作り上げていこう」との意識が高まっていること。以前は受け身だった町の人がだんだんと元気になっていく姿を、星さんは感じているという。

また、いつも星さんは、大学生協のメンバーを「スタッフの一員」として迎えてくれる。「若いみんなは行動も頭も柔軟で、何でも対応してくれるから助かる。」と言ってくれるが、外から来た私たちに期待と信頼を寄せ任せてくれるからこそ、学生達は全力で応えたいと思うのではないか。

この3月の大学生協の活動では、仮設住宅の暮らしで、普段思い切り体を動かせる場所がない子ども達に向けたスポーツレクリエーションを企画した。直前の案内にも関わらず、予想を大きく上回る41人もの小中学生が参加し、驚きと喜びが広がった。

「本当に、40人集まった子ども達っていうのは、大学生協がコツコツ地道に学習支援とか、七ヶ浜を支えてくれた結晶だったなって思うんですよ。だから、やっぱりこれからも、関われる限り関わってもらいたいし。中身は変わっていくかもしれないけど、できる範囲で構わないから、継続支援をずっとしていただきたいなと思いますね。子ども達にしてみれば、これからなんじゃないかなって、ふと思いましたね。」

そうしたつながりを通して、都市と農山漁村を結ぶJUONの取り組みと、七ヶ浜の望むことが何かできればいいなと語ってくれた星さん。

今までも、これからも、やることは変わらない。

「ボランティアに来てくれる人の気持ちを大事にして、地元の思いとも上手くマッチングできるように。最善を尽くして受け入れられるボランティアセンターでありたいなって思います。」
 

  • ボランティアのオリエンテーションをしている星さん。全国各地から集まって来たボランティアとの交流は欠かせない。

  • 星さんには、多くの人が集まってくる。大学生協ボランティアセンターに参加して、リピーターになった学生も数多くいる。
 
徳田 一絵
JUON NETWORK 2013年 第86号