JUONのあの人: 第38回 清水文清さん

第38回 JUONのあの人
清水文清さん

清水さんは、1950年に広島県福山市で生まれた。山間部で小学2年生まで育ち、中学までは田畑を手伝っていた。当時から人の面倒見がよく、いろんな役が回ってきたという。現在、NPO法人グリーンツーリズムとやま副理事長、NPO法人利賀飛翔の会副理事長も務める。「子どもの頃は、親からの評価が2つあって、あんたは優しい子か冷たい子か分からんと(笑)。自分で思ったらその道で、親が何言っても進んでしまう。」
 


JUON設立のきっかけの一つは、大学生協が廃校を活用したセミナーハウスを通して、過疎地の人々と出会ったこと。その一つ「スターフォレスト利賀」の運営に尽力してきたのが、富山大学生協元専務理事の清水文清さんです。設立20周年の今年度、設立当初からの役員にお話を伺っていますが、その3人目として清水さんに話していただきました。
 
 

若い人から年配の人まで一つの目標を持ってやれるNPOとしては、学生の参加というのはとても大きい。


「森や木に深い関心は持ってなかったけど、地球全体がおかしくなっていっているのではないか?環境問題を考えないと、これから人間にとって負荷が大きくなるのではないか?といつも議論してたよね。」

子どもの頃から社会問題に関心があった清水さんは、学生時代に理事として生協活動に参加していた富山大学生協にそのまま就職。学生時代には自治会活動への参加や、その後就職後も障害者運動に参加した。1990年代初め頃には生協で、学内のゴミやリサイクルなど環境問題に取り組み始めていたという。

そのような中、94年に富山県利賀村(現・南砺市)から富山大学生協に対し、97年春で廃校となる坂上小学校の活用について打診される。村長や助役とともに訪ねてきたのが、岩崎敬さん(JUON元理事)だった。岩崎さんは、埼玉県神泉村(現・神川町)の活性化計画を立てていたので、早稲田大学生協にセミナーハウスの計画の相談をし、廃校を活用した「コープビレッジ神泉」の設計などにかかわっていた。その後、利賀村の地域活性化の仕事も進めていたことから、富山大学生協に相談に向かった、という経緯があった。

最初に話があった当初は、清水さんも慎重だったが、翌95年に富山大学生協の専務理事に就任してからは、北陸地域の大学生協の連帯活動が進み出し、具体的な検討を始める。

「共同事業部をつくろう、いずれ事業連合にしようということ」を福井大、金沢大、富山大の3大学生協で意思統一ができ、それでは村と検討していこうかというのがスタートの経緯。そうは言っても、色々な勉強をしたり研究会もやったりして、なかなか判断しきれなかいでいた。」

話が進んだのは、97年3月に廃校になった後のことで、98年の5月にオープン。名称は、公募で富山大学の学生が考えた「スターフォレスト利賀」となった。星の見える森を大切にするいろんな拠点にしていこうという思いが込められている。

話は前後するが、95年は、清水さんにとって様々な転機の年であったという。なかでも大きいのは、阪神淡路大震災だ。

「これは行くしかないと思い、寄付してもらった食べ物や水などをバンにいっぱい詰めて運んだ。震災後3日目の朝に、現地に入った。」

震災後の97年度、全国大学生活協同組合連合会の理事会の下、「人・時・自然・環境委員会」が設置される。それまでに持っていた農山漁村地域とのつながりから、過疎の問題、地域文化の問題、自然の問題に大学生協が関わることの意味と価値を考え、地域興し、地域文化や森林保全、ボランティア活動へとつなげていくことを模索検討した。清水さんはこの委員会の副委員長となる。

そして、この委員会の中間答申として、JUONの設立が呼びかけられた。

「何と言っても大学生協が大きな力になっていて、若い人から年配の人まで一つの志を持ってやれるNPOという中で、学生の参加というのはとても大きい。富山大学生協で「『樹恩割り箸』を採用する時にいっぱい議論があった、環境に悪いのではないかとか。だから逆に、森林保全について丁寧に説明できた。割り箸は、若い人と一緒に議論できる素材の一つだった。」

その後、スターフォレスト利賀を拠点に活動を進め、「そばの里 森林の楽校」を2003年に開始する。その年には、04年に合併することになっていた利賀村で、活動を進める組織が必要だということでNPO法人グリーンアーツコミュニティ利賀が設立され、事務局長(後に副理事長)中心メンバーとして活躍する。

更に、同年富山県がグリーンツーリズム研究会を設置した際には、JUON理事として参加した。研究会は、翌年NPO法人グリーンツーリズムとやま(富山県条例にもとづく地域活性化センターとして指定される)に。現在は、副理事長を務めているが、JUON同様中山間地域の活力を生んでいこうという趣旨の下、農業を中心に活動を行なっている。

「JUONでも農業にもう少し着目し、協力し合える地域があれば1つでも2つでも進めていければよいと思う。あと、今後のあり方や中期計画などをしっかり固めて、実際に各地域で活動を実現していけるように、みんなで協力して進めていきたいなと。」

最後に、スターフォレスト利賀の今後について伺った。最初の10年は大学生協が中心となって地域と管理組合をつくり運営してきたが、経営が困難となってからは地域の振興会に引き受けてもらい、現在は一般財団法人利賀ふるさと財団が指定管理団体として運営を引き継いでいる。

「今年から、新たに安定的に料理やお風呂の世話などをやってもらえる体制が財団の方でもできたので、大切な施設をできるだけ長く使えるように今後とも支援・協力したいと思う。」

 

  • 2018年7月7日「そばの里 森林の楽校」の交流会で、話をする清水さん。

  • 2005年10月22日東海北陸地域ブロック「そば打ち体験」の際の清水さん。
 
鹿住 貴之・佐々木俊宙
JUON NETWORK 2018年 第108号