JUONのあの人: 第21回 久保田繁男さん

第21回 JUONのあの人
久保田繁男さん

久保田さんは1945年、東京都青梅市で生まれた。自然や昆虫好き以外に、野球少年という一面も。山登りも好きで、東京教育大学(現筑波大学)農学部林学科に入り、卒業後は公務員に。91年に、西多摩自然フォーラムを設立。「山仕事を始めたのは、団体を設立してから。最初はほぼ独学だったから、危なっかしかったかもしれないね。」
 


1999年に始まった「森林ボランティア青年リーダー養成講座in東京」の第1期から、活動場所の提供や指導者としてお世話になっている西多摩自然フォーラム。東京の老舗の森林ボランティア団体として、森林関係のネットワークづくりにも大きな役割を発揮しています。代表の久保田繁男さんに、設立の経緯やこれからへの思いをお話しいただきました。
 
 

手入れの必要な山はそこら中にあって、団体が増えてもやる場所はいくらでもある。


東京都青梅市の自然豊かな環境で育ち、少年時代の趣味は昆虫採集。家の周りではいろいろな生きものを見ることができた。なかでも、チョウ好きで知られる久保田さん。チョウとの出会いは・・・

「カブトムシを採りに行った時に、見たことない大きなチョウが木の樹液にいて、虫かごに入れて持って帰って。何か分からないから、ちょうど近所にいた虫に詳しいおじさんに見せたら、オオムラサキというチョウだよ、珍しいんだよ、と。そこから興味を持ちました。」

山登りも好きだったことから、大学では林学を専攻。卒業後も山に行くことが多かった。西多摩自然フォーラムを立ち上げるきっかけとなったのは、1991年に発表された、東京都の「秋留台地域整備計画中間報告」。二市二町(青梅市、旧秋川市、旧五日市町、日の出町)の広域地域整備計画。各市町の大規模な開発計画を、東京都が調整しようというものだった。対象の丘陵部は、久保田さんが昆虫調査に行っていた場所。

「ここが開発されたらやばいな、と。同じように活動していた植物や野鳥が好きな人と、『ちょっとなんとかしようや』と言って、1991年12月に西多摩自然フォーラムを設立しました。」

活動の目的は、「丘陵部の開発計画の見直しを求める」、「自然を活かした地域のあり方を考える」の2つ。アマチュアだが、植物や昆虫などに詳しいメンバーの間では、20〜30年放置されてきた里山は、ある種の植物や動物がいなくなっているという危機感があったという。

「里山というのは、自然のままに保護していれば生態系が保全される場所ではないという認識が元からあったので。『開発による破壊の危機』と、『放置による荒廃の危機』という二重の危機を突破する。これが西多摩自然フォーラムの戦略目標だと掲げて始まりました。」

開発に真っ向から反対とは言わず、「自然環境と調整のとれた開発」への計画見直しを求めるスタンスをとる。92年には、とにかく大勢の人に開発予定地の自然を知ってもらおうと大規模なイベントを行なった。多い時は100〜120名が集い、マスコミも計画に関心を示すようになった。92年の後半には、開発区域の周辺で、田んぼの復元、森林整備、伐採した材を使ったキノコ栽培と炭焼きを始める。93年からは、トウキョウオオサンショウウオとオオムラサキの調査を、毎年継続する形でスタートした。

青梅市の例では、開発側が行った環境影響評価より精度の高い調査を報告。それを機に設置された自然環境調査検討委員会に、地元の活動団体の代表として参加した。その後の土地利用検討委員会、オオタカ調査検討委員会でも、調査や協議の場で専門性を発揮していく。

結果的に、開発計画はほとんどが中止になった。バブル崩壊や、住宅開発で採算が取れなくなったという時代背景はあるが、西多摩自然フォーラムが与えた影響も大きい。

JUONと西多摩自然フォーラムの関わりは、99年の第1期森林ボランティア青年リーダー養成講座in東京で講師をお願いしたのがはじまり。以来、久保田さんには毎年講師としてお世話になっている。また、ここ数年は、JUONが協力している企業の森づくり活動を、西多摩自然フォーラムのフィールドでも実施し、講師もお願いしている。

「教えることによって鍛えられる部分もあるなと。単に自分が労働力というだけじゃなくて、教える側にとって非常にいい経験だと思う。指導員をさせることは、人材育成の一つの手段だと思っています。」

そして、これからの森づくり活動で大切なのは、モニタリングしながら順応的管理をすることだと語る。

「調査を踏まえて作業して、作業の結果、目標通りになっているのか、きちんと点検しながら、場合によっては軌道修正する。それを一つのフィールドで、春夏秋冬というシーズンで経過を追いながら作業していく。そういうやり方が必要だと思いますね。」

最後に、JUONに期待することを聞いてみた。

「JUONの最大の特徴は、若い人たちを集めていること。若い世代が、どんどん育ってくれることを期待したい。リーダー講座を受講したら、そこからもっといろいろ経験して、一本立ちできるような人が育ってほしいよね。手入れの必要な山はそこら中にあって、団体が増えてもやる場所はいくらでもある。先々、自分で一つの団体を構えるくらいの、そういう人材が出てほしいですね。」


 

  • 「森林ボランティア青年リーダー養成講座in東京」では、里山保全活動の回で西多摩自然フォーラムにお世話になっている。

  • 青梅の森で行われている企業の森づくり活動で作業の説明をする久保田さん。
 
鹿住 貴之・徳田 一絵
JUON NETWORK 2014年 第91号