JUONのあの人: 第23回 寺尾善喜さん

第24回 JUONのあの人
寺尾善喜さん

寺尾さんは1961年、高知県香美郡夜須町(現・香南市)に生まれた。神戸市外国語大学への進学を機に神戸へ。数ヶ所の大学生協の専務を経て、07年より神戸事業連合の専務に。11年に大阪事業連合と合併して阪神事業連合の専務となった。子どもの頃は、父親についてよく山に行っていた。「山の境がどこにあるか教えるからついてこい、と言われて。季節の山菜や蜂の子、サワエビを取ってきて食べたり。山の生活をしてましたね。」
 


JUON設立の大きなきっかけとなった阪神淡路大震災から、1月17日で20年が経ちました。JUON元理事の寺尾善喜さんは、当時、大学生協の震災復興活動の中心を担った一人です。その後、理事として、関西中国地域の活動を進め、現在も大学生協の立場から、活動を支えていただいています。20年を振り返って思うこと、これからにつなげたい思いなどを聞きました。
 
 

学生はシニアの方と協同体験をすることで、世代を超えた人のつながりを体験できて成長につながる。


「阪神淡路の復興の取り組みが縁となって、農山漁村の人々と、都市の学生という、地域・世代を超えたヒューマンネットワークが形成されて。そうした関係が維持されるようにとJUONが設立されたんですよね。」

阪神淡路大震災後の、大学生協による仮設学生寮の建設。JUONの設立や「森林の楽校」のきっかけの一つになった取り組みだ。兵庫県内5ヶ所中、芦屋のテニスコートには、徳島県三好郡の林業関係者の提供による間伐材のミニハウス58棟が、多くのボランティアや建設関係者の力で建てられた。その年の夏以降、神戸の学生などが恩返しにと、徳島で森林ボランティアを始めたことが、JUONの今につながっている。

「大学生協も基本は都市部にある組織なんだけれども、農山漁村とのつながりを実感するというか、意識する機会になりましたよね。それがまた間伐材だったので、間伐や森の意味についても理解をする、気づくきっかけになったと思うんです。」

「一度は自分が手をかけた山はあったけども、もうそれは無理だって諦めて。見て見ぬふりをするようになっていたわけね。」

震災当時、寺尾さんは神戸商科大学生協の専務理事をしていた。大学生協では、学生が春休みなので旅館や大学の宿舎を借り、泊まりがけを前提としたボランティアセンター(以下、ボラセン)を2月に開設。事務局は芦屋の旅館と神戸商科大内の2ヶ所に置かれた。ボラセンの運営にあたったのは、全国の大学生協の学生委員や職員。各地から来る学生ボランティアを受け入れて現場を采配し、物資配給や避難所での活動などに加わった。4月以降は、神戸商科大に「ぼらんてぃあ西神戸」ができ、登録した学生が、仮設住宅や小学校に訪問型の活動を行った。

「大学生協が、ボラセンを立ち上げてボランティアコーディネートをするということに、初めて取り組めた実践例ではなかったかなと。」

実は、寺尾さんは高知県出身。子どもの頃は、山を持っている父親が植林や枝打ちなど、森林の手入れをするのを間近で見て育った。神戸市外国語大学への進学とともに神戸へ。入学してまもなく大学生協の学生委員会(当時は組織部)に所属し、3年時からは学生ながら専務として、働きながら勉強するという生活を送っていた。学生委員会の取り組みでは、合成洗剤よりせっけんを使おうという啓発運動や、水俣病など社会問題を取り扱った映画の自主上映を行った。

「そういう企画をするのが楽しくてね。そっから入ったような感じがあるね。それで学生で理事までやって。」

その後、90年の姫路工業大学の生協設立にあたり、専務として異動。92年からは神戸商科大の専務にもなり95年の震災を経験した。

寺尾さんのJUONとの関わりは、当時の大学生協神戸事業連合専務だった石井真弘さん(JUON元理事)の言葉が大きい。

「ちゃんと大学生協として、JUONに関わるんだよと言われたのがきっかけでしょうね。それで、森林の楽校に行って。」

石井さんから引き継ぐかたちでJUONの理事になり、関西の「森林ボランティア青年リーダー養成講座(以下、リーダー講座)」や森林の楽校にはできるだけ参加するようにしていた。子どもの頃から森が身近にあったため、兵庫の中坪や京都の亀岡といった活動場所へ行くのは抵抗がなかった。に賭けない形で山を引き渡せるかというのは、これからの自分の一番、林業あるいは所有林に関しては大きなテーマになりますね。」

「学生にも参加してほしくて、よく一緒に行ってましたね。リーダー講座の内容って、学生に聞かせたいことなんです。直接森林ボランティアをする、しないにかかわらず。」

関西の活動で印象深いのは、中坪で大雨が降った時のボランティアだという。1日限りではあったが、石や泥をかき出すボランティアに学生を連れて参加した。

JUONに関わるようになって、森の大切さを再認識したと話す寺尾さん。

「森がきれいであってこそ美しい海につながることや、山津波のこと、日本の森が実は非常に荒れているっていうことに気づけたのが、個人的にはすごくよかったです。一緒に行った学生もそういう気づきをしてくれることが、自分にとって、JUONへの関わりがいだと思ってますね。」

JUONの取り組みは、学生の生きる力や社会人基礎力を育むには非常によいプログラムで、大学生協が目指す、組合員の成長という目的とも合致していると寺尾さん。

「学生の学びと成長、また、大人と学生の交流。そんな場面を提供できているNPOだと思ってます。シニアの方々は学生から元気をシェアしてもらって。学生はシニアの方と協同体験をすることで、世代を超えた人のつながりを体験できて成長につながる。そんな役割を期待してますね。」


 

  • 第1期「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」の第1回では、司会を務めた。

  • 20年前の「仮設学生寮ハウジングコープ感謝のつどい」での寺尾さん。
 
鹿住 貴之・徳田 一絵
JUON NETWORK 2015年 第93号