JUONのあの人: 第25回 森光信さん

第25回 JUONのあの人
森光信さん

森さんは1964年、京都府亀岡市に生まれた。大阪の大学にも自宅から通い、現在は京都市内の精密板金工場に自宅から勤務する、根っからの土地の人だ。リーダー講座の生活面でも色々と気を回して下さる面倒見のよい方。近隣でなかなか安価な宿が見つからなかった時も、助け舟を出していただいた。「わしんとこ泊まればいいんや。せっかくだから餅つきもしよ。」
 


JUON関西中国地域ブロックの活動地の一つ京都府亀岡市。針葉樹も広葉樹もあり、また、炭窯もあるフィールドで、その山主が、森光信さんです。都会から近い里山で兼業農家をしている森さんに、活動を受け入れるようになった経緯や思いについて聞きました。
 
 

これまでの人がやったことの上に、今の自分がいる。何故そこに木が残されてるのかを考えるのが、思いやり。


「中学になったら草刈機くらい使わなあかん。小学生の時はかまへんけど。そう言われたのを、はっきり覚えてるよ。」

森さんが自分で山の手入れをするようになったのは、中学生から。母親から刈払機を持たされたのが最初だ。物心ついてから母親がスギ・ヒノキを植えた斜面もあり、山に入るのが当たり前だと思っていた。今でも時間の取れる時に枝打ちをするなど、親子ともども山に入っている。

京都府中部に位置する亀岡は、平地の田畑が小高い丘で区切られる、のどかな農村の風景が広がる場所だ。とは言え、都会からのアクセスはよい。京都駅から在来線で30分前後。最寄り駅から車で10分の距離にある。

JUONがここで活動させてもらうようになったのは、そんなアクセスのよさが理由だ。関西地域は、滋賀から兵庫まで東西に広く会員が散らばっている。みんなの中間地点で活動をできるような場所を探していた時、重元勝さん(JUON理事)の知り合いの、宮崎省三さん(2010年5月1日発行No.74「JUONのあの人」)が、京都竹炭クラブで、既に森さんの山で炭焼きをしていた。

大学卒業後、自宅から仕事に通っていた森さんが35歳の時、お父さんが入院して土を触れなくなってしまった。そのため、自分が先祖代々の田畑を守るしかないと、兼業を始めた。農作業は初めてだったが、集落の親世代の人に聞きながら、手探り状態で始めたそうだ。そんな最初の頃の01年に、京都竹炭クラブが森さんの田んぼから見える下流の休耕田で、炭焼きを始めたのだ。

「あない湿気たところで、いい炭なんか焼けるわけはない。うまくいかんから、すぐ止めるやろと思ってたんよ、最初は。でも、雨の日も雪の日も毎週末に来ては、炭焼きをやってはる。」

一生懸命な姿を見て一年ほど経った頃、森さんから声をかけた。話してみると、田舎出身の人も多く、むら社会の人づき合いにも理解がある人達だった。

「この村では一般的によその人は受けつけない。でもすぐ近くで同じ時に苦労してたから、仲間のような感覚を持ったってのもあって、うちの山を使ってよいよって。」

JUONが亀岡に通うようになったのは05年から。しばらくは、炭焼きや、それに伴う雑木の伐採などを日帰りで行っていた。森さんと盃を交わしたのは、09年の「第3期森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」が初めてだ。講座のフィールドとして亀岡にも行くようにしたのだった。森さんの家に20人弱の大所帯で民泊させていただいた。

「村で山をやってる若いもんは一人もおらん。なのに若い女性までもが森に入ろうとする姿に、心を打たれたんよね。」

森さんは東京オリンピックの年の生まれで、他のJUONの活動地で受け入れて下さる方々のなかでは格段に若い。むしろヤングジュオンに世代としては近いのに、甥や姪を迎えるかのように接してくれるのだ。まちの人は、のんびりしに田舎に来るのだろうから、大変な山仕事はしなくていいと、農作業を体験させてくれる。「1本でも枝を切ったら、自分らの山やで。」と、気軽にまた来てねというメッセージを伝えてくれる。

山に対しては、一見無頓着とも思える発言をする森さんだが、現場では時に怒ることもある。

「まわりを伐採して、大分綺麗になってるところで、4本のうち1本は既に伐ってある。なのに、何故その横の木を伐んねん?伐りやすい、楽なところばかり選んで、『JUONでたくさん伐りました!』は違うやろ。これまでの人がやったことの上に、今の自分がいる。何故そこに木が残されてるのかを考えるのが、思いやり。」

人の足跡を大事にするのは、森さんが、この村を次の世代に引き継ぐ要に自分がなると覚悟しているからなのかも知れない。村内の同世代で百姓をしている人は、森さんの他にはほぼいない。まだその親世代が担っている家ばかりだ。自分に農作業を教えてくれたおじさん達から、息子が定年を迎えて百姓を始めた時には、頼りされていると、ひしひしと感じるそうだ。

思いを汲むということは、それぞれができること、得意なことをして、補い合うことでもある。

「それが協力というもの。そういう経験ができる場所として、他の団体と一緒に活動できるこの山があると捉えてほしい。」


 

  • 2015年6月28日総会・記念イベントのオプションツアー・京都亀岡コースの参加者の皆さんと記念撮影。

  • 2012年1月「第5期森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」で受講生と火の番をする森さん。
 
岩下 広和・小川 結衣
JUON NETWORK 2015年 第95号