JUONのあの人: 第66回 和田弘美さん

第66回 JUONのあの人
和田弘美さん

和田さんは、1970年に兵庫県三原郡西淡町(現・南あわじ市)に生まれた。3歳まで愛知県名古屋市で過ごした後は、香川県高松市で育つ。中学校ではバレー部、高校ではコーラス部に所属し、高校は盆栽畑に囲まれた田舎の進学校に通った。高知大学の同級生は、出会ったことのないタイプの男子ばかりだったという。はんてんに下駄を履いていたり、髪型がリーゼントだったり、単車に乗ってどこまでも行ったり、個性的で愉快なクラスメイトに価値観は広がった。「私は真面目ちゃんだったんですけど、あ、こんな生き方でもいいんだって思った。そこでなんか一皮むけるんです(笑)。」
 


香川県と徳島県で開催している「里山・森林ボランティア入門講座in四国」。その最初の提案者であり、スタッフとして「さぬきの森 森林の楽校」とともに関わっていただいているのが、林業女子会@かがわ代表の和田弘美さんです。香川県の林業専門職として働きながら活動されてきた和田さんに、森づくりと女性について、活動への思いについて語っていただきました。
 
 

蒔かない種は出てこない


「子どもの頃は、田園畑で寝っ転がったり遊んだりしながら過ごした。自然いっぱいで育ったことで、自然に関わることが好きになったと思う。」

和田さんは、物心がつく4歳の時に、それまで過ごしてきた名古屋から香川・高松の自然豊かな地域に越してきた。山や田んぼに囲まれて、森林に親しんで育った子ども時代。和紙の研究者だった父親の影響で、小さい頃から和紙職人の話を聞く機会が多く、中学の自由研究では紙作りの実験を行った。それらがやがて木材科学への興味につながっていく。

理科の先生を目指し、大学は教育学部を受験したが失敗。結果的に高知大学の農学部林学科に進学した。林業の専門家を養成するクラスで木材科学の研究室に所属し、ケナフ栽培を通して植物と土壌の分析を行う。偶然にも、父親が担当教官と共同研究をしており、教科書のほとんどが父親の著書だったという。

当時の林学科は男子学生が多く、45名のクラスのなかで女子は9名だけだった。

「女性も行くようになってきた時代ではあるけど、まだまだ先駆けで。」

在学中は研究に没頭し、研究者になる道も考えていたが、研究以外の違う世界も見てみたいという思いから、公務員として香川県庁の林業専門職に就くことを決意。女性は採用されたことがないと聞いていたが、思い切って採用面接に応募した。

「面接官から、できるんか?できるんか?っていっぱい聞かれたので、ブチって切れて、男性にできて女性にできない公務員の仕事ってどういうことがあるんでしょうか?って聞いたんですね(笑)。」

結果、採用され、女性初の林業技師となった。最初は保険関連の業務に従事し、林業改良指導員として同期の男性職員とともに出先機関の林業事務所で働いた。しかし、「女性に任せられない」と仕事を引き継いでもらえなかったり、女性であるだけで林家から会話を拒否されたり、時にはセクハラを受けることも。悩みながら模索するなかで、質問力の大切さに気づく。

「質問力さえあれば、相手はいっぱい喋りたいんだと。間伐の木はどうやって選んでいるんですか?とかいろいろ聞いたら、何時間でも喋るんです。最初は、あんたに言うことないわって言ったのに(笑)。」

相手にいかに気持ちよく話してもらうかを大切にしながら、どんどん打ち解けていったという。異動するまでの7年間で、さぬき市林業研究会との良好な関係を築いていった。

30歳で出産した和田さんは育休に入っていたが、さぬき市林業研究会が「さぬきの森 森林の楽校」を行うと聞き、子どもと一緒に参加したのがJUONとのつながりの始まり。職場復帰した後も、2人目の子どもが小学校を卒業するまで親子で参加し続けた。

2016年に県庁で森林公園の管理と担い手育成の担当をしていた時、森林組合の作業班に女性が入ったことが話題に上がる。自身の経験から、男性社会のなか女性一人では寂しいのではないかと、全国で広がる林業女子会を香川でも作りたいと考える。そして、香川県森林組合連合会の女性担当者とともに、林業女子会@かがわを立ち上げた。緩くつながりながら女子の力で香川の森を元気にすることをコンセプトにメンバーを募集。林業従事者でなくとも活動に共感すれば誰でも参加可能で、できるだけ縛りをなくすために会費もない。目指すのは、100年先の元気な森を子ども達に引き継ぐことだ。

「森とか、女子っていう林業では弱い分野とか、地元の文化とか、伝統とか。フォローしていく人がいなかったら廃れるものを守りたいし引き継ぎたい。その役割が私なんじゃないかなって思っています。」

現在は、林業女子会@かがわで講師派遣や木工ワークショップなども行うようになり、活動を広げている。和田さん自身は、起業家セミナーへの参加やラジオ番組の企画・出演など活発的だ。

林業女子会@かがわ立ち上げと同じ頃、森林の楽校を運営していた長本朝子さん(JUON元理事/22年8月1日発行・会誌123号「JUONのあの人」)から、スタッフにならないかと誘いを受け、15年から手伝うようになった。加えて、スタッフの高齢化を危惧し、担い手を育てるために、四国で「森林ボランティア青年リーダー養成講座(現・「里山・森林ボランティア入門講座」)の実施を提案した。そうして始まった講座は今年で9期になる。

最後に、活動への意気込みを教えていただいた。

「蒔かない種は出てこない。若くて元気なうちに蒔いてたら、子どもを育てる時に、あ、森のことちょっとやろうかなとか思ったり、子育て終わったら私みたいにお手伝いしようかなっていう人も増えるかもしれないから。これからも続けていきたいです。」
 

  • 2024年9月21日「第8期里山・森林ボランティア入門講座in四国」では、翌日の「さぬきの森 森林の楽校」の準備の説明をした。

  • 2008年9月28日「さぬきの森 森林の楽校」に子どもと参加する和田さん。
 
遠藤 紗穂里・鹿住 貴之
JUON NETWORK 2025年 第136号