JUONのあの人: 第65回 川田隆昭さん

第65回 JUONのあの人
川田隆昭さん

川田さんは、1960年に香川県大川郡大内町(現・東かがわ市)に生まれた。早稲田大学政治経済学部を卒業後、1985年に共同通信社に就職。千葉、長崎、大阪、東京、大阪、京都、大阪、東京、大阪、和歌山、大阪と勤務地は変わったが、途中で自宅を大阪に構えた。2025年4月に退職。1999年に大阪のNPO法人日本森林ボランティア協会が主催する「第4期森林大学」に参加したことをきっかけに、森林ボランティア活動を始めた。2023年5月からは事務局長を務める。「スポーツは全然ダメで、基本的にインドア派。活動を始めた頃は、小学生だった娘と息子を順番に連れて、活動して、子どもを遊ばせてで、ちょうどよかった(笑)。」
 


今年で第19期となる「里山・森林ボランティア入門講座(旧・森林ボランティア青年リーダー養成講座)in関西」。そこで、2015年より講師を担当していただいているのが、日本森林ボランティア協会の事務局長である川田隆昭さんです。森林ボランティア活動を続けてきた経緯や思いについて、川田さんに話していただきました。
 
 

ボランティア団体は企業じゃできない市民と森林との接点になる


「農水省の担当をやらせろって言ったら、いいんだけど、大阪に異動してほしいんだと折り返しみたいに言われて(笑)。」

大学卒業後、1985年に共同通信社に入社し、ほぼ事件や警察を担当してきた川田さん。93年から東京の社会部に所属し、警視庁担当としてオウム事件などの取材にあたっていた。しかし、農林水産省や林野庁の担当もしたいと申し出る。

「少し前に台風で、大分ですごい被害が出た。間伐遅れの森が流れちゃうというのが印象にあって、それを取材したいなと思って。」

1ヶ月後には、東京から大阪に転勤することになったが、異動前に農林水産省や林野庁を回った。大阪に戻ってから、森林関係の取材の足掛かりを探していたところ、新聞で日本森林ボランティア協会が実施する「森林大学」の参加募集の記事を見つける。早速応募したが、既に定員は一杯。半年待って、第4期に参加することができた。1999年のことである。

森林ボランティアリーダー養成講座である森林大学は当時、半年間に隔週で夜間の座学、宿泊もある実習合わせ15ほどのカリキュラム。大阪府警担当のキャップとなり、毎日夜中に帰るような生活だったが、参加したいと思った。

「サブキャップに、これやってみたいと言ったら、いいですよ、たまには早く抜けて下さいよと言ってくれて。19時に抜けるのは考えにくい職場で、めっちゃ自由な感じだった。2泊3日も抜けていいの?すごくうれしかった(笑)。」

講座を修了した後も、自宅から活動場所が近かったこともあり、月1〜2回は活動に参加した。ほかの地域に遠征するような企画もあり、高知県が森林ボランティアを育成する際に、団体として手伝いに行ったこともある。折しも、高知県が日本で初めて森林環境税を導入する時だった。担当ではなかったが、森林関係の記事を、自分の体験を交えながら書いていたという。

その後、理事も務めるようになったが、2008年に東京に転勤することになった。そのタイミングで、東京に事務所のある、森林ボランティア団体の全国ネットワーク組織である森づくりフォーラムの理事となる。それまでは、日本森林ボランティア協会の理事長が、森づくりフォーラムの理事を務めていたが、交代したのだ。

当時、森づくりフォーラムは経営が厳しく、東京にいた2年の間は、JUONの鹿住貴之事務局長とも一緒に、立て直しに尽力したのだった。

その後、大阪に戻り、協会の活動に参加し始めていた浅沼由紀さん(JUON理事)から相談を受け、15年から「第9期森林ボランティア青年リーダー養成講座(現・里山・森林ボランティア入門講座)in関西」の講師を引き受けることになる。

「若い人が中心で、学んで、力をつけていくのを見るのが、すごい楽しくて、楽しみで行っているのもある。僕でいいのかな?と思ったけど、うちのテキストを作るのに、自分なりに勉強したから、技術的な根拠は説明できるかなと。」

協会のテキスト『森づくり技術の手引き 安全な作業のために』は、川田さんが中心となり09年12月に初版を発行した。

「遠征の時に、みんなで飲んでて、理事長と事務局長とで言うこと違うの困るよなっていう話になって。協会の共通テキストがあったらいいよねと。じゃあ、作んなよと言われて。」

資料を集め、自らいくつか講習を受け、2年をかけて完成させた。JUONでも関西の入門講座では、このテキストを使わせていただいている。

森林ボランティア活動を長く続けてきた川田さんに、これからについて伺った。

「30年前に僕が入った入口ってのは、間伐遅れだったけど、今は木も大きくなりボランティアの手に負えないところがあって、竹林整備とかが主力になってきた。ただ、竹林も簡単に言える問題ではないから、この後、ボランティアは何をやればいいのか、整理していかなきゃと思ってます。」

団体の運営についても続ける。

「資金の問題。若い人が入ってこなくなって、会員の減少もあるけど、企業の支援が最近ちょっと減りつつあるんだよね。理由はいろいろだけど、今後、どう運営していくか。ただ、ボランティア団体っていうのは、企業じゃできない、市民と森林や自然との接点になるもんだから、何とか続けていきたい。」

最後に、JUONへの期待も話していただいた。

「若い人が、活動に関われるような入口をどんどん広げてほしい。何がつらいって、若い人がなかなか入ってこないんだよね、今。僕らは僕らでつくっていかなければならないけど、JUONにも頑張ってほしいなと思ってます。」
 

  • 2024年10月20日「第18期里山・森林ボランティア入門講座in関西」で、森林について解説する川田さん。

  • 2015年11月28日「第9期森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」では、伐倒方法について説明いただいた。
 
鹿住 貴之
JUON NETWORK 2025年 第135号