JUONのあの人: 第63回 秋山清重さん

第63回 JUONのあの人
秋山清重さん

秋山さんは、1963年に千葉県流山市に生まれた。小学2年生から柏市、中学からは東京都豊島区、その後、板橋区で育つ。大学の法学部を卒業後、1987年に太陽生命保険相互会社(現・太陽生命保険株式会社)に入社。名古屋支社、本社融資部、リスク管理部門などを経て2009年から総務部勤務、太陽生命の森林担当となる。その後広報部、企画部を経て2022年から再び総務部勤務。小学5年生で吹奏楽器に触れ、中学・高校と吹奏楽部で活動。高校からアルトサックスを吹き、大学からはジャズの世界へ。卒業後も社会人バンドで演奏を続けている。「行った大学に吹奏楽部がなくて、ビッグバンドに入ったんですが、そのクラブは遡ると応援団。だから、音楽サークルなのに厳しい縦社会で、結構、キャラが変わりました(笑)。」
 


2006年に栃木県那須塩原市に「太陽生命の森林(もり)」を設置し、森林保全活動を始めた太陽生命保険株式会社。JUONではスタート当初から指導者の派遣など、お手伝いをしていますが、09年からこの活動の二代目の主担当となったのが、秋山清重さんです。一時、担当を離れたものの、22年から再び担当に戻った秋山さんに、これまでの活動や思いについて語っていただきました。
 
 

生物多様性が維持されることによって生かされている


 「森の担当と聞いて、頭のなかがまっ白になっちゃった。サラリーマン生活は終わったと思いましたが、始まりだったんですね(笑)。」

大学卒業後、金融業界に就職しようと、太陽生命に入った秋山さん。最初の4年間は名古屋支社で、保険外交員の女性達に囲まれ、現場での営業を経験した。その後、本社に転勤となり、会社のなかで働く仕事が続く。09年には総務部所属となり、森の担当となった。

「アウトドアに縁がなく、森って何?(笑)。支えてくれたのが、現場で指導をお願いした方々。当時40代半ばで、あそこで生き方の転換ができなかったら、別の人間になってたんでしょうね。」

太陽生命が社会貢献活動として森を選んだのは、保険証書など紙を多く使っていたためだ。06年の栃木県那須塩原市に続き、07年に滋賀県高島市朽木、24年には山形県上山市に「太陽生命の森林(もり)」を設置している。

そもそもJUONとの出会いは、財団法人サンワみどり基金(現・公益財団法人三菱UFJ環境財団)が林野庁の「法人の森林」制度を活用し、群馬県みなかみ町に設置した「水源の森」でのことだった。水源の森では、1999年からJUONと森林の楽校(「水源の森 自然ふれあい楽習」)を共催しているが、そこに同じく「法人の森林」制度を活用する太陽生命の初代担当者が、勉強のために参加したことで、つながりができる。

当時、JUONの活動をサポートしていた、中嶋敏男さん(2011年11月1日発行・会誌80号「JUONのあの人」)や、みなかみ町の木工家の広川義直さんが、活動をバックアップすることになった。広川さんとは、活動のたび、現地での準備から実施まで行動をともにすることになる。

「活動がある土日の前の金曜に2人で準備して、その晩は夜中まで語り合ってましたね。森や森の担当の素晴らしさ、どう生きるべきかみたいな話を何回も聞きましたね。」

社員参加の春と秋の活動の際には、ものすごい勢いで仕事を片づけ、森に向かう。森そのもの、そして、関わる人達の魅力に、どんどん活動にはまっていった。

「理屈抜きに森はいいなあと思いますね。『人間は森に生かされているんだよ』っていう広川さんのフレーズが今でも心に残ってるんですが、違和感なく、森にいると気持ちいいんですよね。」」

那須塩原の森は、カラマツの人工林。最初は真っ暗で、道もなかった。外注はせず、すべて社員の手で整備し、みるみる明るくなっていく。そのような森を見ながら、森に来る機会のない人にも楽しんでほしいと思うようになった。

「日本ダウン症協会が全国6ヶ所で開催していた『自転車教室』に、社員がボランティアで参加してたんですが、終わることになって。新しい交流として、栃木支部のご家族を森にお招きすることにしました。」

12年から春に「森林教室」を始めたが、ダウン症の子ども達は音楽が好きだと知り、14年から音楽会を開始。JUON職員で、太陽生命の活動を担当する岩下広和はチェロが弾ける。

「自分はサックス、ピアノを弾くお母さん、岩下さんにも協力いただいて、森のなかで音楽の生演奏を始めました。音楽を聴いたり、踊ったり、合唱したり、笑顔に包まれたイベントとして定着しています。」

もう一つ、太陽生命では、森とつながりの深い活動として「クアオルト」に力を入れている。クアオルトとは、クア(治療・療養、保養のための滞在)とオルト(場所、地域)が合わさった「療養地」という意味のドイツ語。ドイツのクアオルトで行われている健康ウオーキングを日本にも広めていこうと、日本クアオルト研究所主催の「太陽生命クアオルト健康ウオーキングアワード」に協賛している。

太陽生命は、日本で4番目に古い生命保険会社だが、旧財閥系ではないこともあり、新しいことにチャレンジする気風があるという。もともとは満期になると保険料が戻ってくる貯蓄型の養老保険が主力商品だったが、低金利時代となり厳しい状況になっていた。

「来たるべき超高齢社会を見据え、どうやって元気に、病気もせず、認知症にもならずに、人生100歳時代を楽しく過ごしていただけるか。そういう支援をする保険やサービス提供に、ぐっと舵を切ったんですね。」

認知症保険を16年に発売し、大ヒット。この年、秋山さんは7年間の森の担当から、広報部に異動となり、この広報も担った。認知症を予防するための保険に組み込まれた活動の一つとして、クアオルトも進める。

最後に、「太陽生命くつきの森林」(滋賀)の自然共生サイト認定の申請を通して、考えたことを伺った。

「生物多様性が維持されることによって、いろんなものが絡み合い、支え合って、我々は生かされていると。スマホで何でもできると勘違いして、現代では忘れかけていることを、森や自然とのつながりによって、意識されることを願っています。」
 

  • 2024年10月21日現在の森の主担当の笹野文香さんと一緒に、JUON会誌132号の取材を受けていただいた。

  • 2023年5月27日「太陽生命の森林『森林教室』」で、サックスを演奏する秋山さん。
 
遠藤 紗穂里・鹿住 貴之
JUON NETWORK 2025年 第133号