JUONのあの人: 第62回 横井進也さん

第62回 JUONのあの人
横井進也さん

横井さんは、1973年に東京都府中市に生まれた。小学生時代は、水泳、野球、中学では剣道部、高校ではバレーボール部に所属。中学までは勉強も好きだったが、高校では部活とアルバイトに明け暮れた。高校卒業後は神奈川県相模原市に移り住みアルバイト生活に。その夏からスポーツクラブのインストラクターとして働いたことをきっかけに、翌年から体育系の専門学校に2年間通った。卒業後もスポーツクラブで働き、97年パルシステム東京に転職。様々な部署を経験し、現在は政策・環境推進部の部長を務める。「父親は教師で、安定した仕事、公務員になればいいみたいなのがあったんです。反発してたんですが、生協を選んだのは、安定してるように見えた、というのもあります(笑)。」
 


2004年から東京都稲城市にある「いなぎめぐみの里山」において、「農と緑の創生」をキーワードに活動を行っている生活協同組合パルシステム東京。17年からは竹林整備活動も始まり、JUONでもお手伝いするようになりました。その当時、事業の担当者だったのが環境推進室の主任であった横井進也さんです。現在は、環境部署を統括する立場として、この活動に関わっている横井さんに、お話を聞きました。
 
 

「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」すべてに里山はつながっている


「『里山保全』と『健康づくり』の関係を説明するのに、苦労した記憶がありますね。」

パルシステム東京では、「いなぎめぐみの里山」(東京都稲城市)において、17年度から竹林整備活動を始めることになった。そこで、樹恩割り箸の利用などでつながりのあったJUONに協力の相談が入る。なお、この取り組みを行うにあたっては、日本コープ共済生活協同組合連合会の助成金制度「健康づくり支援企画」を活用することを考えていた。

「グリーンジムという考え方を、JUONからアドバイスしてもらって、突破口が開けました。20年以上も前のインストラクターの記憶が蘇りましたね(笑)。」

イギリスなどでは、森林整備など環境保全活動を行うことで、健康を維持する「グリーンジム」が広がり、国からも医療費抑制の一環として、補助金が出ていた。生協で働く前に、スポーツクラブのインストラクターだった横井さんは、運動量について、「メッツ(METs)」という運動強度の指標が使えると思いつく。

東京都府中市で生まれ育った横井さんは、高校卒業後、神奈川県相模原市に引っ越し、アルバイト生活を始めた。すぐにスポーツクラブのインストラクターになると、そのおもしろさにはまり、翌年から体育系の専門学校に通うことにした。卒業後もインストラクターとして働いたが、数年経つ頃、将来を考えて転職を決意する。

「スポーツクラブからの帰り道のガソリンスタンドで、いつも夕方に生協のトラックが給油してるんですよね。好きな運転ができて、体を動かす仕事っていうのもあるんですけど、5時に終わるんだ、この仕事はって(笑)。」

中途採用募集のあった東京マイコープ(現・パルシステム東京)に1997年中途採用で就職。八王子センターに配属され、ドライバーとして商品の配達を担当した。日中は一人で気楽な反面、働く職員の仲間意識が強く、心地よかったという。

配送センターでの勤務は途中、小金井への異動はあったものの配達を5年、営業を1年担当。パルシステム東京は、今では宅配に特化しているが、当時はお店もあり、6年ほど店舗関係を担当した。その後、本部に6年間勤務し、2015年には江戸川センター長となった。翌16年には再び本部に戻り、環境推進室に配属される。

「樹恩割り箸のことも引き継ぎましたが、今のJUONさんとのつなぎ直しの始まりは、17年1月に、いなぎめぐみの里山の土地を取得したことですよね。」

パルシステム東京には、東京・山の子の家製造の樹恩割り箸を12年から18年まで商品として扱っていただいたが、製造量の限界もあり、以降は現在まで本部の食堂で利用いただいている。また、10年から14年までは、JUONが活動する鳩ノ巣フィールド(東京都奥多摩町)において、職員研修として森林整備を行った時期もあった。

そして、17年にいなぎめぐみの里山の竹林保全企画が始まる。パルシステム東京は、04年にいなぎめぐみの里山を開設。地元NPO法人のサポートにより農作業や里山体験の企画を通して農の大切さや里山の環境保全を学ぶ機会を提供してきた(現在は別法人に委託)。その後、所有者だった大手不動産会社が土地を手放すことになり、組織内で慎重に協議を重ね17年1月にいなぎめぐみの里山の土地の一部を取得することとなった。

そして、その年の夏、JUONと打ち合わせを持つ。そこから、一緒に下見にも行き、地元関係者の話も聞きに伺った。

「何しろ根気よく、里山をよく見てくれたっていうのがね、すごく印象深いですね。地元NPO法人の代表にも、最初に話を聞きに行ってくれたじゃないですか。これは安心してお任せできるなと思いました。」

12月に初めて組合員参加の企画を実施。その後、年3回程度の活動を行ってきた。昨年からは、JUONがサポートして、植物や生物の調査をしながら、里山の中長期的な保全計画づくりを行っている。

一方で、現在の政策・環境推進部では、パルシステム東京、また、パルシステムグループとして、環境・エネルギー政策を進める立場にもある。

「『脱炭素社会』『循環型社会』『自然共生社会』の実現を掲げているんですが、このすべてに里山はつながっているなと。」

今年に入ってからは、JUONが協力して、いなぎめぐみの里山の森林がどのくらい二酸化炭素を吸収しているのかも、簡易な方法だが測定している。1年間でトラック3・1台分の排出量相当の二酸化炭素を吸収していることが分かった。この結果を直接活かせるものではないが、パルシステムグループでは、30年までに46%温室効果ガスを13年度比で削減することを掲げている。

「いなぎでは、今後計画を策定して、それに沿って保全を実現していきたい。それと、担い手。地域や組合員の力をつなげていきたいですね。そのためにまだまだJUONさんの力も必要だし、JUONさんの人材育成にも関われているのかなと。お互いの思いを里山で実現できればと思っています。」
 

  • 2024年10月18日団体会員の方たちへの報告会に参加した際の横井さん。

  • 2016年5月12日樹恩割り箸製造施設の山の子の家(東京都日の出町)を視察した。
 
遠藤 紗穂里・鹿住 貴之
JUON NETWORK 2024年 第132号