JUONのあの人: 第56回 湯浅明さん

第56回 JUONのあの人
湯浅明さん

湯浅さんは、1954年に愛知県名古屋市に生まれた。2人兄弟の次男。商業高校を卒業後、三重の銀行に就職し、三重県四日市市で暮らす。48歳からグリーンボランティア「森林づくり三重」の活動に参加。子どもの頃から足が速く、小学校の運動会の徒競走ではいつも一番だった。体は小柄だが健康でスポーツは得意。「中学では、人数足らんで来てよと言われてブラスバンド部。でも、陸上部にも、テニス部にも、ラグビー部にも誘われて。数合わせでたのむって言われると、嫌って言えない(笑)。」
 


岐阜県揖斐川町にある廃校をリメイクした宿泊・研修施設「ラーニングアーバー横蔵」は、今年で20周年を迎えます。ここを拠点に2004年から開催する「風の谷 森林の楽校」で、現在指導をして下さっているのが、湯浅明さんです。三重で森林ボランティア活動を始め、今では岐阜との二拠点生活を送る湯浅さんに、お話を聞きました。
 
 

森林での活動によって、ストレスを浄化できる。


「自分は95歳まで生きようと決断しまして。その折り返しである48歳の時に仕事中心の生活ときっぱり決別しました。」

名古屋にある普通の住宅街で、一般的なサラリーマン家庭で生まれ育ったという湯浅さん。商業高校を卒業後、三重県の銀行に就職した。祖父が91歳まで生き、父親はそれ以上生きると聞かされていたことから、自分も長生きをすることに決める。

就職してからは、仕事一筋の真面目な銀行マンだったそうだが、目標の半分の年齢を迎えるにあたり、何をしようか考えたという。

「公務員さんとか、大きい会社の管理職の人達の定年後を見ると、今まではりきっとったのに、自宅でボケーッとステテコ姿で(笑)。」

仕事の先輩や取引先のお客さん達の姿から、定年後に何かできることを身につけようと考える。そのような時に、偶然出会ったのが、森林ボランティア団体である、グリーンボランティア「森林づくり三重」だった。

「たまたま公園を歩いとった時に、木を伐ってる人がおって、『おたくら、どういう団体ですか?』って聞いて。『じゃあ君もいっぺんしてみるか』ということで、その場ですぐ入会させられて(笑)。」

毎週のように活動に参加するようになり、森林活動の魅力にはまり込んでいく。参加するたびに、森の空気感や自由感、自然に対する関心度合いが高まっていったという。住んでいた四日市は公害の町であり、環境についての取り組みを行っているという思いもあった。

また、銀行では営業マンとして仕事をしていたが、2000年頃の当時、パソコンの普及も進み、仕事でイライラすることも多かった。

「今までの銀行員生活と真逆の発見もあって。仕事は仕事、ボランティアはボランティアって切り分けてました。会社と全く逆の人達と出会えて、ストレスのない日々を送ることができたから、ずっと長続きしたんかな?」

ボランティアのメンバーは退職した高齢者が多かったが、比較的若い湯浅さんは、可愛がられた。持ち前の人懐っこさもあったのだろう。

長生きするためには健康が大切だと、体力づくりにも意識を持っていた。森林ボランティア活動に加え、マラソン、テニス、自転車や畑作業にも時間を費やす。元々健康ではあったが、その甲斐もあってか、今も病院や薬の世話にはなっていないという。もう一つのボランティアとして取り組む献血も、先日200回を達成している。

初めて参加したマラソン大会は、岐阜県揖斐川町で行われている「いびがわマラソン」だった。以来20回ほど参加している。

「走りながら、この山はいいな、素敵なところだなあ、と思ったんですわ。で、その時に、たまたま新聞でラーニングアーバー横蔵がオープンするという記事を読んで。ちょっと行ってみようかなっていうことで。」

ちょうどその頃、小林正美さん(JUON副会長)が、谷汲村(現・揖斐川町)の廃校になった横蔵小学校を、宿泊施設として運営を始めたところだった。しばらくして訪ねた湯浅さんは、小林さんと出会う。

翌年には、ラーニングアーバー横蔵を拠点に「風の谷 森林の楽校」がスタート。やがて湯浅さんも参加するようになり、5年ほど前からは、仲井博信さん(2010年11月1日発行・会誌76号「JUONのあの人」)の後を引き継いで、指導者を担っている。

そして、3年前から揖斐川町に古民家を借り、四日市市との二拠点生活をするようになる。これまで活動してきたことを、すぐにできる場所に住むことは自然な流れだった。

「四日市はマンション住まいで木や土が全くなく、揖斐には山や森や川とか、畑が十分にある。生活でもオンオフの切り替えがすることができると。森林での活動をすることによって、ストレスを浄化できるみたいな感じで。」

最後に、ラーニングアーバー横蔵の手伝いもしながら、森林の楽校を支えて下さる湯浅さんに、これからの思いを伺った。

「参加していただいた方が、継続して森林整備をすることによって、フィールドが点から線へ、線から面へ広がっていく。人が手をかけることによって森がいかに素晴らしい場所になるかを、作業を通じて感じてもらえれば。」
 

  • 2022年12月3日「風の谷 森林の楽校・特別編」では、学生の参加が多く、その指導にもあたった。

  • 2006年11月18日初めて参加した「風の谷 森林の楽校」の際の湯浅さん。
 
鹿住 貴之・鈴木 郁
JUON NETWORK 2023年 第126号