JUONのあの人: 第55回 中川善博さん

第55回 JUONのあの人
中川善博さん

中川さんは、1975年に千葉県市原市に生まれた。高等専門学校(高専)卒業後、NECフィールドサービス(現・NECフィールディング)株式会社に入社。主にコンピューターを修理するエンジニアとして勤務していたが、2012年からNECフィールディング労働組合の専従職員となる。小学校でミニバスケットボール、中学校で軟式野球、社会人になってからはアイスホッケーを始め、現在はジュニアチームのコーチを務める。「児童会、生徒会の役員、部活ではキャプテンをやってました。基本、目立ちたがり屋だったんでしょうね(笑)。」
 


2014年からNECグループ労働組合連合会がJUONと協働で実施する「Nの学校・遊学隊」。森林保全を中心に、10年にわたって活動を行ってきましたが、実行委員会のメンバーとして唯一最初から関わっているのが、中川善博さんです。現在は遊学隊の隊長を務める中川さんに、これまでの活動や思い、これからの展開について、お話を伺いました。
 
 

社会貢献や環境保全は、奉仕の精神だけでは続かない。楽しくないと。


「一番すごいのは、世界とつながったことですよね。画面越しに子ども達が目をキラキラさせて、ボルネオの森を見てましたし。現地とのやり取りは、見てた僕らが嬉しかったですよね。」

年2回各地で実施してきた「Nの学校・遊学隊」。19年春には千葉県南房総市・大房岬で台風被害に遭った森の整備活動を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止を余儀なくされた。しかし、その秋には、現地の協力により、被災した森のライブ中継など、オンラインで実施。そして、オンラインなら世界とつながることもできると、翌年春には、インドネシア・ボルネオ島とつなぐ活動を行った。

「JUONのノウハウとリソース、パイプと、僕らが持っているオンラインのノウハウがうまく合わさった結果、すごいことができた。オンラインでも、環境のことに思いを馳せ、現地の状況を知ることができたのはすごいこと。」

現地の森林と生活を守る活動を行う日本の団体の協力を得て、実施することができたのだ。

NECグループ労働組合連合会とJUONのつき合いが始まったのは、13年。NEC関係各社の労働組合の連合体として、08年にNECグループ連合が結成され、その5周年事業が検討されていた。4万人以上いる組合員が社会に貢献できないかと、農山村地域での森林保全活動を行うことになり、JUONに相談があったのだ。そして、14年から遊学隊がスタートし、活動を継続してきた。

「今は第4期に入ったところなのかもしれません。最初は本格的な森林整備の『ガチンコ林業体験』。次に、ゆるやかで家族向けにイベント性を高めた『ふれあい教室』に舵を切って。コロナ禍でオンラインが加わったのが第3期。」

活動を重ねるなかで、家族対象の活動を中心に据えるようになる。これまでに、東京、埼玉、静岡、神奈川、兵庫、茨城で開催してきた。なお、新執行委員の研修でも、森の整備を行っている。

「最初からいるのは僕だけなんですよね。初期に、手違いでほぼ何もない状況から、昼までにバーベキューの準備をするという、究極のインポッシブル・ミッションもやりましたし(笑)。段取り組んで、間に合わすというのが、楽しくてしょうがなかったですね。社会貢献や環境保全は、奉仕の精神だけでは続かないと思うんです。楽しくないと。」

中川さんは、中学卒業後、高等専門学校の情報工学科に入学。時代は90年代を迎える頃で、コンピューターに関わる仕事がしたいと思ったことがきっかけだ。企業実習をNECフィールドサービス(NECフィールディング)で行い、それが縁で入社した。

「実習でネットワークの設計を教えてもらって、この会社、面白そうだなと。ただコンピューターだけではなくて、お客さんと関わることも面白そうだと思って。」

入社以来、エンジニアとして、コンピューターの修理や、顧客に対する営業なども担った。箱根駅伝の中継システムに携わることもあったが、転機が訪れたのは09年。労働組合の委員長から、執行委員をやらないかと声をかけられる。文化体育部長として、全国の社員のレクリエーション企画などを担当することになった。

その後、東日本大震災の際には、労働組合の被災地支援活動にも参加。自社の組合だけでなく、NECグループ連合内の多くの方々とつながることになる。

そのようなこともあり、12年には専従職員となっていたが、遊学隊の実行委員として、白羽の矢が立った。

「いろんなところで、率先して発言するのとか、文句言うのを見られてて、目をつけられたんでしょうね(笑)。何ごとも、お願いされたら、極力引き受けようと思っているんです。」

遊学隊では、森林保全に加えて、台風被害、プラスチック問題、獣害などもテーマとして、扱ってきた。

「個人ではできなくて、団体だからこそできること、時勢に合わせたことをやる必要があるかなと思っていて。関心のない人にも、社会の課題を知ってもらおう、ということを心がけています。」

最後に、今後の活動とJUONへの期待を伺った。

「オンラインから、リアルな活動に戻りつつある今が第4期かなと。12月に千葉の大多喜町で竹林の整備を行いましたが、今後どうしていくかを考えなくてはいけないと思っています。JUONには、これからも環境や森林保全の専門家として、よきアドバイザーとなっていただきたい。こちらは人が代わっても、横にいて下さるパートナーとして、活動のヒントを与える存在でいてくれるとありがたいと思っています。」
 

  • 2020年10月24日「Nの学校・遊学隊 ふれあい教室」(オンライン/千葉・南房総)では、ライブ中継先の大房岬から参加した。

  • 2015年10月31日「Nの学校・遊学隊 ガチンコ林業体験」(東京・奥多摩)の参加者で記念撮影。一番右上が中川さん。
 
鹿住 貴之
JUON NETWORK 2023年 第125号