JUONのあの人: 第46回 山本博さん

第46回 JUONのあの人
山本博さん

山本さんは、1955年に大阪府大阪市に生まれた。信州大学卒業後、林業会社で現場仕事から経営全般に携わる。1997年に日本森林ボランティア協会の設立に参加し、退職。登山が好きで、高校ではワンダーフォーゲル部、大学では山登りやスキー三昧だった。 「大学ではほとんど勉強してないですよ。信大の入学面接で、何故この大学を選んだのかって質問されて、山に登りに来ましたって言うたら笑われました(笑)。」
 


今年で第14期となる「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」。そこで、2017年より講師として初回に森づくりのレクチャーをお願いしているのが、日本森林ボランティア協会の事務局長である山本博さんです。森林ボランティア活動を続けてきた経緯や思いについて、山本さんに話していただきました。
 
 

森林ボランティア活動に参加したら目から鱗。びっくりしたよね、なんやこいつらはって。


「林業会社に入ることそのものは、そんなに躊躇はしなかったけど、最初は仕事が大変で。スギ・ヒノキの苗畑担当になったんですけど、鶏糞を混ぜるからって取りに行かされて。生々しくて、しばらく鶏はよう食べなかったですよ。今となってはいい経験だけどね。」

信州大学の森林工学科で造園を学んでいた山本さんは、まさか自分が林業の道を選ぶとは思っていなかったと振り返る。学生時代は、勉強よりも山登りやスキーで山へ。年間100日を越えていたという。当時はちょうど就職氷河期。就職難のところを母親から知人の林業会社を紹介され、就職したことが始まりだった。

「いきなり造林させるのですよ。人の技見て盗む、右も左も知らんやつにそういう育て方をしてました。ものすごい身につくって言うてましたけど。10年で一人前ちゃう、15年で一人前ちゅうわけの分からないこと、最初は辛かったですよ。」

入社して高知に赴任し、すぐに現場に入ったが、仕事はすべて手作業。下草刈りは刈払機を使わずに手鎌で、枝払いは手斧だった。働いていた地域に、動力の振動による白蝋病が多かったことも関係しているそうだ。

「あの時は23歳くらいで無茶苦茶元気な頃でも、50を越えているようなおばさんと一日鍬を使って畑を耕していると負けましたもんね。コツとかなんも分からんもんで、ただただ力任せだったから、あれはショックでしたね。」

下積み時代を経てやがて大阪本社に転勤になり、新規事業の企画立案を任される。そして、その情報収集のため参加したNPO法人ひょうご森の倶楽部の活動で、山本さんは衝撃を受けることとなる。

「森林ボランティア活動に参加したら目から鱗で、皆が一生懸命ヒノキの枝打ちするわけなんですよ。その頃自分は、そういう人達にお金払う立場じゃないですか。でも、全くの無償で木を伐って、いい天気のなか、いい汗をかいて面白いというのが皆の感想だったんですよね。びっくりしたよね、なんやこいつらはって。」

森づくりをしたいと願う人々を山につなげたいという思いから、企画の一つとして森林ボランティア事業を会社に提案したが、相手にされなかったという。それでも山本さんは、会社に勤めながら合間を縫って森林ボランティア活動に参加し続けた。それから半年後、約20年務めた林業会社を退職し、2人の同志とともに日本森林ボランティア協会を設立。関西ではほとんどのボランティア団体が行政主導であるなか、市民から立ち上がった初めての団体だ。大阪の団体だが、その意味も込めて「日本」を冠した。森林整備やリーダー育成の「森林大学」などを行っている。

「うちはとんでもない奴ら、いっぱいおるもんな。色々な団体を見ても、チェーンソーとかってほとんど団体持ちですやん。うちはほとんど個人持ちなんだよね。個人が車にどんと積んでだーっと走るなんていうのは、大阪の団体ではうちくらいで。別にチェーンソー買えなんて言うてないんだけど、なんでやろな?」

設立当初から事務局長を続けてきた山本さん。直接JUONと関わり始めたのは、「森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」で講師をお願いしてからだ。最近は加えて、企業の森づくり活動の受け入れも行っていただいている。JUONの活動には若者の参加が多く、山本さんの期待も大きい。

「若い人が多くて、うらやましいなって思ってる。若い人が増えていけば楽しいと思いますよね。この前も森林大学に20代のめちゃめちゃ若い子が来たんですけど、ああいう子らが入ってくると変わってきますわね。」

最近では働き方改革が叫ばれているが、少し前から半農半Xという言葉がある。一つの会社に勤めるのではない働き方が若い人の間でも増えてきた。林業もそのような人達の関わりが大切なのだと思いを込める。

「そうなれば絶対面白いと思いますね。もともと林学をやっていた人では絶対に出てこないような発想があるような気がしてね。そこらに期待したいですよね。」
 

  • 2020年9月27日「第14期森林ボランティア青年リーダー養 成講座in関西」の第1回で講義をする山本さん。

  • 2017年10月1日「第11期森林ボランティア青年リーダー養成講座in関西」で初めて講師をした際の山本さん。
 
池 大祐・岩下 広和・遠藤 紗穂里・鹿住 貴之
JUON NETWORK 2020年 第116号