第32回 JUONのあの人
渡部孝二さん
渡部さんは1937年、福島県南会津郡田島町(現・南会津町)で生まれた。仕事務めの傍ら、地域活動では多くの役員を経験。町の福祉・ボランティア分野の見聞大使にも。40代の頃から食育に関心を持ち、体調管理に気を使うように。健康が活動を支える原動力だと話す。「今でも玄米菜食、1日2食です。健康体ですね。」
渡部孝二さん
渡部さんは1937年、福島県南会津郡田島町(現・南会津町)で生まれた。仕事務めの傍ら、地域活動では多くの役員を経験。町の福祉・ボランティア分野の見聞大使にも。40代の頃から食育に関心を持ち、体調管理に気を使うように。健康が活動を支える原動力だと話す。「今でも玄米菜食、1日2食です。健康体ですね。」
「樹恩割り箸」を製造している全国6ヶ所の障害者施設の一つであるNPO法人あたご。
2011年からは同じ地域で、「会津高原 森林の楽校」が開催されるようになり、毎年参加者と利用者が交流しています。
理事長を務める渡部孝二さんに、これまでの歩みとこれからについて、語っていただきました。
学生さんの若い知恵を借りながら、障害者の事業の参考にしていきたい。
「いろんな仕事をやらせてもらいました。社会福祉協議会では評議員とか会長もやったし、県の社会福祉協議会の監事もやったり。あと、町のいろんな役職、今も地区の区長やってるんです。01年にボランティア連絡会ってのも立ち上げて、今だって会長だ。」
渡部さんの口から、様々な役職名が飛び出す。昔からの好奇心の強さで、地域活動に積極的に関わり続けてきた。今年で80歳、その活動意欲は衰えず、あたごをはじめ多方面で活躍している。
渡部さんは地元の高校を出た後、同じ南会津郡内の木工会社や林業会社に事務員として就職。労務などのほか、木工や製材といった仕事を経験した。子育てのために32歳で実家のある田島町に戻り、ガラス製造会社に転職。事務仕事に加え、カメラやテレビに使われる光学ガラスの製造に携わった。定年を迎えるまでに2回の子会社設立に取り組み、その一つである南会光学株式会社では工場長取締役に。定年後も64歳まで役員を務めた。
あたごとの関わりのきっかけは1994年、南会光学が株式会社スミタフォトニクスに社名を変えた後のことである。
「フォトニクスにいた時に、ろうあ者を職員として入れたの。そして、その後に、自分が住んでる地域で手話サークルってのを立ち上げたんですよ。」
サークル運営の関係で社会福祉協議会に出入りをしていくなかで、当時「雑草の会」という名前の、あたごの元になる障害者の親達が立ち上げたグループと出会った。
「たまたまうちの会社に障害者がいて、それとの関わりでもって、あたごの方にも興味があったんで、役員をやったんです。」
あたごは設立から10年経った2007年に法人化。そして、08年に渡部さんは理事長になる。その翌年に、JUONの会員であった故・五十嵐道雄さん(2010年2月1日発行・会誌73号「JUONのあの人」)の提案を受けて割り箸説明会が開催され、JUONとのつながりが生まれた。町の補助金を受けて建物や機械を整備し、また、すでに樹恩割り箸を製造していた群馬県のエルシーヌ藤ヶ丘に職員を派遣して、10年から割り箸づくりを開始した。
あたごに関わり出してからの沿革を、正確に記憶された年と共に渡部さんは振り返る。
「食品加工はね、本格的にやり始めたのは13年なんだけども、その間にやんなくちゃなんなかったのは、厨房を直したり。10年に木工関係と割り箸があったでしょ。11年にはグループホームを1ヶ所開所したんですよ。それから、12年にまたグループホームを立ち上げて、木工関係の工場の増築を図ったの。そして、13年の2月に、ペレットと、農産物の加工。バイオマスのペレットがそこでもって試験的にスタートしたの。」
そのあまりに早い事業拡大に、時には利用者の親からなかなか理解が得られないこともあった。しかし、思いを伝え続けながら、事業を進めて雇用を増やしてきた。関係機関のご支援、地域の皆さんや職員の協力があったからこそ、進めることができたという。障害者やその親達のニーズに必死に応えようとしてきた渡部さんの姿が目に浮かぶ。
「障害の程度によって、仕事をするのが合う人と、自立訓練だとか生活訓練、生活介護に合う人とおりますよね。地域の障害者が、働く場所がないということで、うちの方も広げてきたんです。」
今後は農産物加工を中心に、様々な組み合わせのなかで事業を広げていきたいと話す渡部さん。目指すのは障害者の生活の向上である。
「やっぱり工賃を上げてやんなくちゃならないと。今うちの月の平均工賃が11,600円。福島県の工賃の基準が20,000円なんですよ。だから、そこまで上げるためにはどうしたらよいかってことで、検討してます。」
毎年開催している「会津高原 森林の楽校」では、学生をはじめとした参加者に、箸の製造体験と、利用者との交流の場を設けている。そのことが利用者達の励みになっており、交流の場を通じてあたごの未来につなげていきたいと、渡部さんは思いを込める。
「やっぱりね、利用者への仕事が増えてきてよかったということと、JUONを通して、大学生との交流ができたのが大変よかったかなと思ってます。学生さんの若い知恵を借りながら、いろんな障害者の事業の参考にしていきたいなと。交流を深めながら、お互い対話の場を設けてね。」
2016年9月「会津高原 森林の楽校」の学習会で話をする渡部さん。
2010年9月あたごの「木製品加工所及び厨房改修工事落成記念式」で挨拶する渡部さん。
遠藤 紗穂里・鹿住 貴之
JUON NETWORK 2017年 第102号
JUON NETWORK 2017年 第102号