JUONのあの人: 第18回 沼田大輔さん

第18回 JUONのあの人
沼田大輔さん

沼田さんは1977年、兵庫県明石市に生まれた。環境問題に関心を持ったのは、小中学生の頃。減り始めた古紙回収が気になり、儲かる仕組みになれば続くのではと、環境経済学を志す。2007年4月より、福島大学経済経営学類准教授。 「身近なことから環境を考える、が私のテーマ。割り箸も、毎日目に触れるものですからね。」
 


2011年から始まった「会津高原 森林の楽校」は、福島大学の学生が実行委員として企画、運営に携わっています。その立ち上げから学生をサポートしているのは、経済経営学類准教授の沼田大輔さん。森林の楽校に取り組むまでの経緯や、今後の活動への思いを聞きました。
 
 

森のことを知って終わり、だとちょっと物足りない。行動につなげてもらいたい。


「森のことは研究には直結してないんですけどね。昔から関わりたいと思っていたことができているのは、いいことだなぁと思っています。」

専門は、環境経済学。特に、デポジット制度に関する研究を大学院時代から続けている。07年、准教授として福島大学へ。学内でリサイクル可能な弁当容器の回収がされていないことを知り、ゼミの活動の一環として、回収の推進に取り組んでいる。

JUONとの出会いは、09年東京でのエコプロダクツ展。弁当容器回収の調査に訪れた他大学の食堂で、樹恩割り箸のことを知っていたため、JUONの出展ブースを訪ねてくれた。そこで鹿住貴之事務局長と会い、南会津での樹恩割り箸や森林の楽校の構想、また、翌年のJUONの総会が南会津で行われることなどを聞いた。

その後、11年秋に森林の楽校が開催されることになり、「学生が動いてくれると活気づくんじゃないか」と、学生との関わりについて相談を受ける。10年度から福島大学生協の理事になっていた沼田さんは、理事会の場で、森林の楽校の関わり方などについて提案した。容器回収の活動と、相互によい影響があるのではとの考えから、森林の楽校に取り組み始めたのだ。実行委員会を立ち上げ、初めは生協学生委員の環境担当メンバーやゼミ生と、勉強会から始めた。今ではゼミ生以外にも徐々に広がってきているが、ゆくゆくは、他大学の学生や社会人も参加できる場にしたいと考えている。

南会津での森林の楽校を始める前、「白神山地 森林の楽校」に参加していた沼田さん。この時の気づきが、「会津高原」の運営に活かされている。

「森林の楽校のイメージがつきましたね。すごくよい森林の楽校だなぁと。学生が関わる余地がいっぱいあると思いましたね。」

また、「白神山地のことを勉強してから来ればよかった」と参加学生が口々に言っていたことから、割り箸に関する本を読むなど、事前学習会をしてから行くというスタイルにした。

「他地域の取り組みも知りたいですね。ほかの地域の人が、ゲストとして実行委員会に来てくれるといいですよね。やっぱり実際の人から話を聞けるのが一番いいので。」

今年の9月には3年目の森林の楽校を終え、これからの課題も見えてきている。

「地元とのコミュニケーションが大切ですね。森林組合や役場の方が、どういう思いで関わってくれているのか。何のために森林の楽校やってるんだろうか、というのが、もっとお互いに情報交換される必要がありますよね。」

何のため、というのは、沼田さん自身も改めて感じていることだという。

「森林の楽校の運営自体が目標ではないので。その運営を通じて何を得たいのかを、もっとしっかり詰めていきたいですね。自分としては、いろんな人とコラボできて、いろんな世界が見えるというのは非常に有意義だったけど、何年も経つと、目新しさだけではモチベーションにならないですからね。」

何のために森林の楽校をやるのか。数値で測れるような具体的な目標を立てづらいところが、難しい部分でもある。

「参加者が、森のことを知って終わり、だとちょっと物足りない。行動につなげてもらいたいですよね。」

一方で、森林の楽校の可能性についても注目している。

「大学生の参加型環境学習のあり方に関心があって、その一つとして弁当容器回収の活動もやっているんですけど。森林の楽校も参加型環境学習だなと思っていて。」

例えば、教育現場や市町村単位でも、小中学生向けの様々な取り組みがある。そこに大学生が入れば、柔軟な発想で活動に広がりが出るし、企画づくりを通して大学生自身が学びを深めることにもなる。森林の楽校に関わる中で、沼田さん自身の関心も広がっている。

「最近は、林業経営に関心があります。森や木など自然科学的なことや、森の管理、里山保全のあり方など、もっと勉強したいんですよね。」

これからの実行委員会は、里山を中心に活動フィールドを広げ、森林の楽校に限らず、様々なイベントを企画、運営していくサークルにしたいと語る。

「学生がやりたいことを主体的に動かしていって、私は見守る。そのなかでいろんなことを学んでいきたいと思っています。JUONには、人や情報、ノウハウといった面で、それを応援してほしいですね。」
 

  • 今年の「会津高原 森林の楽校」の参加者と。

  • 2013年8月「会津高原 森林の楽校」実行委員会。学生と教員・職員で一緒に議論している。
 
徳田 一絵
JUON NETWORK 2013年 第88号