第17回 JUONのあの人
石坂哲也さん
石坂さんは1972年10月17日、群馬県沼田市に生まれた。隣の昭和村には祖父母の家があり、よく遊びに行っていた。現在は、実家も昭和村にある。森林の楽校の開催にあたっては、ボランティアの受け入れに不慣れな地元の方の理解を得るために奮闘。打ち合わせと準備を重ね、いざ当日。「本当に参加者が来るのか不安でした。参加者の皆様がバスから降りてきたときは、正直ホッとしました(笑)。」
石坂哲也さん
石坂さんは1972年10月17日、群馬県沼田市に生まれた。隣の昭和村には祖父母の家があり、よく遊びに行っていた。現在は、実家も昭和村にある。森林の楽校の開催にあたっては、ボランティアの受け入れに不慣れな地元の方の理解を得るために奮闘。打ち合わせと準備を重ね、いざ当日。「本当に参加者が来るのか不安でした。参加者の皆様がバスから降りてきたときは、正直ホッとしました(笑)。」
14番目の「森林の楽校」として、群馬で昨年から始まった「霧の高原 森林の楽校」。もともと埼玉の「神の泉 森林の楽校」に参加していた石坂哲也さんが、地元での開催を希望したことから実現しました。林業と森林ボランティアへの思いや、森林の楽校の今後の展望についてお話を聞きました。
ボランティアでヒントを得たい。それは、プロの林業だと出てこないと思うんですよ。
「自分からボランティアするとか、森林整備するという考え方は全くなかったですね。」
群馬県沼田市で生まれ育った石坂さんが、初めて森林ボランティア活動に参加したのは、高校を卒業した後、東京に出て、いくつかの仕事を経てからのこと。
それがJUONの「神の泉 森林の楽校」だった。当時、体調を崩して仕事を退職。人のためになる、社会貢献できる仕事がしたいと思い、就職情報をインターネットで検索するうち、ボランティアという言葉が目に留まる。以前から林業の衰退は気になっていたため、自然と「ボランティア」と「森林」が結びついたという。検索して、一番初めに出てきたのがJUONのイベントだった。
「そこでの参加者との交流がとても刺激になって、悩んでいた自分の方向性がだいぶ見えてきましたね。間伐材を利用した樹恩割り箸、下草刈りの大切さ、間伐する意味などを知ることができて、自分も森林保全の仕事をしてみたくなって、林業に就くことを決めたんです。」
その後、森林組合の間伐体験などに参加してから、林業会社に就職。そこで様々な作業経験を積んだ。最初から独立志向だったが、重機などを一から揃えるにはお金がかかるため、すぐには難しい。そんな時、後に森林の楽校に協力してもらうことになる(株)トーリンの専務から話をもらい、フォレストノーツを立ち上げた。営業と作業の両方でトーリンの仕事を請け負っている。
希望の林業の職に就き、独立も果たした石坂さんだが、林業と森林保全との間にギャップを感じている部分もある。
「林業イコール森林保全じゃないんです。昔の人は本当に山をよくしたいというのがあったんでしょうね、いい木を育てたいから。間伐も木が必要だから伐っていただけで、環境保護やってるつもりはなかったと思うんですけど。今の林業はそうじゃないんですよね。」
補助金なしでは成り立たず、補助金の要件を満たすために、必要でない林道を開けたり、伐る必要のない木を伐ることもあるという。
「経営を考えると必要性なのも分かるけど、だんだん自分の考えてるのと違うなと思ってきたんですよね。それで、自分が林業に就くきっかけとなったボランティアを、自分の中で答えを見つける場にしているんですよ。」
一度東京に出てから実家に戻り、昔の自分も含め「山間部で生活している人ほど森林には無関心」だと感じたことが、地元での森林の楽校開催へとつながっていった。地元住民の多くは、ボランティアと聞くと、道普請のような義務的な地域行事をイメージする。森林の楽校の開催を通して、自主的なボランティアがどういうものか感じてもらいたい、と言う石坂さん。
「外部から人が来て交流を深めてもらって、地元の方にもっと新しい考え方をもってもらいたいと思って始めたんですよ。」
森林ボランティアと、仕事としての林業。両方を経験した石坂さんだからこそ、両者の橋渡し役ができる。
「ボランティアに来てる人は本当の林業を知らないし、林業やってる人はボランティアを知らない。その価値観の違いや、お互いの無い部分を共有というか。参加者にはプロの仕事を、地元の指導員にはボランティアのよさを知ってもらいたいんですよね。」
石坂さんは、荒廃する森を再生するためには「新しい価値」が必要だと言う。
「ボランティアで新しい価値のヒントを得たい。それは、プロの林業だと出てこないと思うんですよ。他の人が山林に対して何を望んでいるのか、林業の世界だけにいては分からないことを得られるかもしれない。」
まだ始まったばかりの森林の楽校。今後は、地元参加者が3割になることを目指したいと意気込む。また、参加者に本当の林業に近い姿を理解してほしいと、プロによる伐倒作業などの実演をプログラムに組み込んでいる。林業の現場の厳しさや、木が売れない現実などを知ってもらい、そこから少しでも木を使おうという人が増えてくれればと願う。
「山散策みたいなこともしてみたいね。炭焼き窯を作ったり、小さい山小屋を作って山で寝泊まり体験とか。あとは、昔の林業でやっていた、山から伐り出した材を玉切りして落とす『まくり』の体験なんかもやってみたいですね。」
「霧の高原 森林の楽校」の開校式で挨拶する石坂さん。
2010年7月「神の泉 森林の楽校」2日目のオプションの下刈り終了後に参加者で記念撮影。
徳田 一絵
JUON NETWORK 2013年 第87号
JUON NETWORK 2013年 第87号