JUONのあの人: 第26回 木下浩一さん

第26回 JUONのあの人
木下浩一さん

木下さんは1963年、兵庫県西宮市に生まれた。大学卒業後、IT系企業に就職し、10年程前に「援農ボランティアリーダー養成講座」に参加。今年、30年程働いた会社を退職し、山梨に移住して、ぶどう農家としての生活をスタートさせた。昔から自然が好きで、学生時代は、子ども達をキャンプに連れて行くサークルにも所属。「キャンプは家族でもずっとやってた。最近では山登りにはまってるわけですね。」
 


「ぶどうの丘 田畑の楽校」は、今年で丸10年を迎えました。初期から活動に参加し、有志活動を含め足しげく山梨県山梨市牧丘町に通った末、今年ぶどう農家になるために牧丘に移り住んだのが木下浩一さんです。「きのやん」が移住を決意した理由やぶどうへの思いなどを話してもらいました。
 
 

第二の人生を歩みたいと思ったんだよね。まだ間に合うかな。


「会社とか大学とは違い、知識や経験を持った人と出会えて自分にもプラスになったり、仕事では会えない人と関われたりするのが楽しいなと。」

JUONに関わり始める最初のきっかけは、IT系の会社に入って20年くらい経った時。社内のイントラネット掲示板に載っていた「ぶどう作りませんか」という、「援農ボランティアリーダー養成講座」(「田畑の楽校」の当時の名称)の募集を見たことだった。

「家族から、『最近笑わなくなったね』と言われて、自分ではそんなつもりはなかったから、ちょっとショックだった。疲れていたのかな。」

学生時代にボランティア活動を行っていた上、昔からアウトドアが好きだったきのやんは、外でやる作業はいいな、と思い応募。他のボランティア募集もあったが、今までにやったことがなく、楽しそうだと感じた。

田畑の楽校に関わり始めてからは、楽しいことばかりではなく、ボランティアを支える側の気づかいや準備などの大変さも知った、ときのやん。そのなかで、田畑の楽校を受け入れる農家の澤登一治さん(2011年2月1日発行・会誌77号「JUONのあの人」)について、こう語る。

「お父さんが、ボランティアにとって作業しやすい環境をつくってくれてありがたかった。お父さんはぶどう栽培にすごく熱心で、70を越えても新しいことに躊躇せずチャレンジしている姿は、自分にとっても刺激になる。ボランティアに対しても熱意があって、色々教えてくれるし、やらせてくれる。農家はなんでもかんでも自分でこなすっていうのがすごいと思ってて、いつかそうなれたら、男としてかっこいいな。」

田畑の楽校でのボランティアを10年近く続けてこられた理由は、澤登さんとのつき合いが楽しかったこと、みんなでわいわい酒を飲みながら話し合えることがおもしろかったからだという。

JUONに関わるまでは農家とのつき合いもなかったが、田畑の楽校で活動していくなかで移住を決意した。

「ITの会社に30年近くいて、外で体を動かしてやる仕事がしたかった。通い始めてからぶどう農家って楽しそうだな、やってみたいな、とずっと思ってた。これからも今の仕事の延長じゃ嫌だなと。娘が社会人になって独立したのを機に、夫婦2人で第二の人生を歩みたいと思ったんだよね。まだ間に合うかな。」

きのやんが移住を決意したのは、田畑の楽校に1年通った末、ぶどう農家になるために山梨の他の地域に移住した千葉夫妻の影響もあった。

「千葉さんには驚いたね。現実的なことを色々聞きに行ったよ。千葉さんの影響って大きいと思うんだよね。ぼんやり移住は考えていたけど、それを後押しされた感じはあるね。」

これから、巨峰の日本一の産地である牧丘で、ぶどう農家として生食用のぶどうを作っていく。

「そんなに大きくするつもりはないけど、おいしいぶどうをたくさん作りたいな。それと、牧丘の巨峰を守りたい、というのがすごくあるね。他の品種もだんだん増えているけど、牧丘は、本当においしい牧丘ならではの巨峰ができる。牧丘っていうブランドを守りたい。」

そう語るきのやんに、今後のJUONとの関わりについて聞いた。

「今年移住したばかりで、まだまだ余裕がないけど、自分の畑をきちんと管理できるようになったら、ボランティアも受け入れたい。ぶどう畑で働く人手が欲しいからではなく、ぶどうを作る楽しさ、田舎の生活の楽しさや辛さを伝えたいから。」

また、田畑の楽校では、お父さんとつき合いが長い自分が、新しく来た人とお父さんとのパイプ役になり続けていきたい、とも語るきのやん。

「もっと広くJUONで広報活動をしてもらって、より多くの人が参加できる環境をつくってほしい。新規就農者などとの横のネットワークも大切にしたいから、JUONの中で移住する人達が増えてくれたらうれしい。」


 

  • 「ぶどうの丘 田畑の楽校」で、初参加者に作業の説明をするきのやん。

  • 2007年9月「援農ボランティア養成講座」収穫祭で、手をかけたぶどうと記念撮影。
 
小川 結衣・鹿住 貴之・松本 貴久
JUON NETWORK 2015年 第96号